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玉の男御子 品詞分解 現代語訳 源氏物語 桐壺 その3

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紫式部の「源氏物語 桐壺」その3です。

原文、現代語訳、品詞分解、語句の意味・用法、と記していきます。

源氏物語 桐壺 その3 玉の男御子 原文

 前(さき)の世にも、御契(ちぎ)りや深かりけむ、世になく清らなる玉の男御子(をのこみこ)さへ生れ給ひぬ。

いつしかとこころもとながらせ給ひて、急ぎ参らせて御覧ずるに、めづらかなる児(ちご)の御容貌(おんかたち)なり。

一(いち)の御子(みこ)は、右大臣の女御の御腹(はら)にて、よせ重く、疑ひなき儲君(まうけのきみ)と、世にもてかしづき聞ゆれど、この御にほひには竝び給ふべくもあらざりければ、大方のやむごとなき御思ひにて、この君をば、私物(わたくしもの)に思ほしかしづき給ふこと限りなし。

源氏物語 桐壺 その3 玉の男御子 現代語訳

 前(さき)の世にも、御契(ちぎ)りや深かりけむ、世になく清らなる玉の男御子(をのこみこ)さへ生れ給ひぬ。

 前世にも(帝と更衣との)御宿縁が深かったのだろうか、世にまたとなくきれいな玉のような男御子までもがお生まれになった。

いつしかとこころもとながらせ給ひて、急ぎ参らせて御覧ずるに、めづらかなる児(ちご)の御容貌(おんかたち)なり。

(帝は)いつになったら(若君に会えるか、早く会いたい)と待ち遠しがられて、急いで里から参内させて御覧になると、世にも稀な美しい御子の御容貌である。

一(いち)の御子(みこ)は、右大臣の女御の御腹(はら)にて、よせ重く、疑ひなき儲君(まうけのきみ)と、世にもてかしづき聞ゆれど、この御にほひには竝び給ふべくもあらざりければ、大方のやむごとなき御思ひにて、この君をば、私物(わたくしもの)に思ほしかしづき給ふこと限りなし。

第一皇子は右大臣の娘である弘徽殿(こきでん)女御の御子で、母方がしっかりし人々の信望も重く、むろん皇太子となるべきお方として世間で大切におあがめ申し上げるけれど、この第二皇子のつやつやとしたお美しさには肩をお並べなさることができなかったので、表向きの普通の御長男としての御寵愛だけで、この若宮をばしんから御秘蔵とおぼしめし、大切に御養育なさることこの上なかった。

源氏物語 桐壺 その3 玉の男御子 品詞分解

 前の世にも、御契(ちぎ)りや深かりけむ、世になく清らなる玉の男御子(をのこみこ)さへ生れ給ひぬ。

前 → 名詞

の → 格助詞 

世 → 名詞

に → 格助詞

も → 係助詞

御契り → 名詞

や → 係助詞

深かり → 形容詞・連用形

けむ → 助動詞・推量・連体形

世になく → 形容詞・連用形

清らなる → 形容動詞・連体形

玉の男御子 → 名詞

さへ → 副助詞

生れ → 動詞・ラ行下二段活用・連用形

給ひ → 補助動詞・ハ行四段活用・連用形

ぬ → 助動詞・完了・終止形

いつしかとこころもとながらせ給ひて、急ぎ参らせて御覧ずるに、めづらかなる児(ちご)の御容貌(おんかたち)なり。

いつしかと → 副詞

こころもとながら → 動詞・ラ行四段活用・未然形

せ → 助動詞・尊敬・連用形

給ひ → 補助動詞・ハ行四段活用・連用形

て → 接続助詞

急ぎ → 動詞・ガ行四段活用・連用形

参ら → 補助動詞・ラ行四段活用・未然形

せ → 助動詞・使役・連用形

て → 接続助詞

御覧ずる → 動詞・サ行変格活用・連体形

に → 接続助詞

めづらかなる → 形容動詞・連体形

児 → 名詞

の → 格助詞

御容貌 → 名詞

なり → 助動詞・断定・終止形

一(いち)の御子(みこ)は、右大臣の女御の御腹(はら)にて、よせ重く、疑ひなき儲君(まうけのきみ)と、世にもてかしづき聞ゆれど、この御にほひには竝び給ふべくもあらざりければ、大方のやむごとなき御思ひにて、この君をば、私物(わたくしもの)に思ほしかしづき給ふこと限りなし。

一の御子 → 名詞

は → 係助詞

右大臣 → 名詞

の → 格助詞

女御 → 名詞

の → 格助詞

御腹 → 名詞

に → 助動詞・断定・連用形

て → 接続助詞

よせ → 名詞

重く → 形容詞・連用形

疑ひなき → 形容詞・連体形

儲君 → 名詞

と → 格助詞

世 → 名詞

に → 格助詞

もてかしづき → 動詞・カ行四段活用・連用形

聞ゆれ → ラ行下二段活用・已然形

ど → 接続助詞

こ → 代名詞

の → 格助詞

御にほひ → 名詞

に → 格助詞

は → 係助詞

竝び → 動詞・バ行四段活用・連用形

給ふ → 補助動詞・ハ行四段活用・終止形

べく → 助動詞・可能・連用形

も → 係助詞

あら → 補助動詞・ラ行四段活用・未然形

ざり → 助動詞・打ち消し・連用形

けれ → 助動詞・過去・已然形

ば → 接続助詞

大方 → 名詞

の → 格助詞

やむごとなき → 形容詞・連体形

御思ひ → 名詞

に → 助動詞・断定・連用形

て → 接続助詞

こ → 代名詞

の → 格助詞

君 → 名詞

を → 格助詞

ば → 係助詞

私物 → 名詞

に → 助動詞・断定・連用形

思ほしかしづき → 動詞・カ行四段活用・連用形

給ふ → 補助動詞・ハ行四段活用・連体形

こと → 名詞

限りなし → 形容詞・終止形

語句の意味・用法

前の世 → 過去・現在・未来を三世といい、生前の世を前の世という。

契り → 前世の因縁

世になく → 世に二つとないように、はなはだ優れている。

清らなる → きらきらしい、輝くほど美しい。

こころもとながる → 気にかけて待ち遠しく思う。

めづらかなる → 世に類なく美しい。

容貌 → かたち、器量。

もてかしづき聞ゆ → ~し申し上げる。

御にほひ → 艶のある美しさ。

大方の → 通り一遍の普通の。

私物 → 私有物、掌中の珠のような秘蔵子。

続きは、こちら → 母君はじめより 品詞分解 現代語訳 源氏物語 桐壺 その4