源氏物語 暮れかかりぬれど 若紫 明石の女 その4 原文と現代語訳
紫式部の源氏物語 若紫 明石の女(むすめ) その4です。
原文、現代語訳、語句の意味・用法、と記していきます。
原文
「暮れかかりぬれど、起(おこ)らせ給(たま)はずなりぬるにこそはあめれ。はや帰らせ給ひなむ」とあるを、大徳(だいとこ)「御物怪(もののけ)など加はれるさまにおはしましけるを、今宵(こよひ)はなほ静かに加持(かぢ)など参りて、出でさせ給へ」と申す。「さもある事」と皆人申す。君も、かかる旅寝(たびね)もならひ給はねば、さすがにをかしくて、「さらば暁に」と宣(のたま)ふ。
原文と現代語訳
「暮れかかりぬれど、起(おこ)らせ給(たま)はずなりぬるにこそはあめれ。はや帰らせ給ひなむ」とあるを、
(人々が、日も)「暮れかかってしまいますが、御発作(ほっさ)もおこらなくなってしまわれたようでございます。早く(京へ)お帰りになるのがよいでしょう」と申すが、
大徳(だいとこ)「御物怪(もののけ)など加はれるさまにおはしましけるを、今宵(こよひ)はなほ静かに加持(かぢ)など参りて、出でさせ給へ」と申す。
高僧は「御物怪(もののけ)などがついている様子でいらっしゃいましたから、今夜はやはり静かに加持などをなさって、(明日)お帰りなさいませ」と申し上げる。
「さもある事」と皆人申す。
「もっともなことである」とお供の人たちも申し上げる。
君も、かかる旅寝(たびね)もならひ給はねば、さすがにをかしくて、「さらば暁に」と宣(のたま)ふ。
源氏の君も、こんな旅寝の御経験はないので、何といっても興味深く感じられて、「それなら(明日の)明け方に」とおっしゃる。
現代語訳
(人々が、日も)「暮れかかってしまいますが、御発作(ほっさ)もおこらなくなってしまわれたようでございます。早く(京へ)お帰りになるのがよいでしょう」と申すが、高僧は「御物怪(もののけ)などがついている様子でいらっしゃいましたから、今夜はやはり静かに加持などをなさって、(明日)お帰りなさいませ」と申し上げる。「もっともなことである」とお供の人たちも申し上げる。源氏の君も、こんな旅寝の御経験はないので、何といっても興味深く感じられて、「それなら(明日の)明け方に」とおっしゃる。
語句の意味・用法
「暮れかかりぬれど、起(おこ)らせ給(たま)はずなりぬるにこそはあめれ。はや帰らせ給ひなむ」とあるを、大徳(だいとこ)「御物怪(もののけ)など加はれるさまにおはしましけるを、今宵(こよひ)はなほ静かに加持(かぢ)など参りて、出でさせ給へ」と申す。「さもある事」と皆人申す。君も、かかる旅寝(たびね)もならひ給はねば、さすがにをかしくて、「さらば暁に」と宣(のたま)ふ。
起(おこ)ら
「起る(おこる)」
発熱する。
帰らせ給ひ「な」「む」
「な」は完了、「む」は推量の助動詞。
「給ひ」は連用形。
物怪(もののけ)
人にとりつき悩ます死霊(しりょう)や生霊(いきりょう)などのこと。
参り
「参る」は、「用いる」「す」などの尊敬語。なさる。
さもある事
もっともなこと。
「さ」は、大徳のことばを受けています。
皆人
全部の人。