翻訳された文章のチェック
日本語の文章になっているか
外国語の文章を日本語で読む際、語彙の難解さなどではなく、ただ単に読みにくい、と思った人は少なからずいるはずです。
翻訳に問題がある場合もあれば、原文自体に問題がある場合もあります。
また、そのいずれもの場合も。
そういった場合は、読みにくい、というよりも、「意味」が成立していないんですね。
つまり、日本語の文章になっていない。
翻訳がしっかりされている、というのは、日本語の文章になっている、ということです。
言葉の並び方が、意味の関係性を表す
一例として、翻訳されたものを、文章チェックしてみましょう。
言葉の並び方を確認すれば、文の関係性は、丸見えになります。
1 一文の主語、述語の確認
2 前後の文の主語、述語とのつながり
2 省略されているものの確認
主に、前の文の主語(キーワード)が省略されます。
~が・~は、といった主語
~を・~に・~で、といった文節
3 接続語があれば、前後の文と文の関係性の確認
順接であれば、前に「原因・理由」、後に「結果」となります。
因果関係は、表裏一体です。「意味」と「意味」は密接なつながりとなります。
並列・添加・累加であれば、つりあうもの同士が、並びます、付け加えられます。
引用例文
知識は、通貨のような非人格的な存在ではない。知識は、本や、データバンクや、ソフトウェアの中にはない。そこにあるのは、情報にすぎない。
知識は、むかしから人間の中にある。人間が、教え、学ぶものである。人間が、正しく、あるいは、間違って使うものである。それゆえに、知識社会への移行とは、人間が中心的存在になることにほかならない。そして知識社会への移行は、知識社会の代表者たる教育ある人間に対し、新しい挑戦、新しい問題、さらにはかつてない新しい課題を提起する。
(「プロフェッショナルの条件」 ドラッカー 【ダイヤモンド社】)
文章チェック
上の文章を見やすいように、図示してみます。
省略されている語は、あえて補いません。
省略されている語は、その並びで、示します。
これにより、何が省略されているのかが、わかるはずです。(省略されるのは、前の文の主語【キーワード】です。)
文章チェックして、図示すれば、意味のつながりも、破綻も、一目瞭然(いちもくりょうぜん)です。
言葉の並び方、言葉の位置、意味がどのようにつながっているのかに注目してください。
引用例文 図示
※スマホを横向きにしてご覧ください
知識は、通貨のような非人格的な存在ではない。
知識は、本や、データバンクや、ソフトウェアの中にはない。
そこにあるのは、情報にすぎない。
知識は、むかしから人間の中にある。
人間が、教え、学ぶものである。
人間が、正しく、あるいは、間違って使うものである。
それゆえに、
知識社会への移行とは、
人間が中心的存在になることにほかならない。
そして
知識社会への移行は、
知識社会の代表者たる教育ある人間に対し、
新しい挑戦、
新しい問題、
さらには
かつてない新しい課題を提起する。
語順 文順
どうです?
言葉(意味)と言葉(意味)が、ちゃんとつながっているか、出鱈目になっているかが、わかるでしょう?
今回は、引用なので、内容の解説はしませんね。
当然のことながら、ただ言葉を連ねれば、それで「意味」が成り立つわけではないんですよね。
適した言葉を、適した位置に置かなければ、「意味」は成り立ちませんし、「意味」と「意味」はつながりません。
翻訳は、語順も、文順も大事です。
英語と日本語では、語の置き方、文の置き方、違いますから。