書き方がわかれば、読める
書き方は、言葉の扱い方
次の文章は、日経新聞のコラム「春秋」です。
この文章を読み解き、日本語の書き方、言葉の扱い方を確認してみましょう。(やさしく解説します。)
書き方とは、言葉の扱い方です。
「智恵子は東京に空が無いといふ、/ほんとの空が見たいといふ」。詩人の高村光太郎は生前の妻の言葉を「あどけない話」という作品にそう残している。東京で体を壊しては故郷の福島で調子を戻す。そんな彼女にとり、本当の空は故郷の山の上に広がる青空だった。
「空が無い」東京も、終戦直後は広々とした青空が覆っていた。東京・九段下の博物館「昭和館」で開催中の写真展「希望を追いかけて」で、改めて知った。焼け跡、バラックの家、平屋かせいぜい2階建ての商店街。永田町も渋谷も表参道も、空の青さとそこここに残る緑が印象的だ。撮影者は米国の鳥類学者だという。
同じ昭和館で「女学生たちの青春」という企画展も開催している。こちらは戦争中の写真が中心で、訓練で銃を構え、ガスマスクを付け、あるいは動員されて工場や畑で働く少女たちの緊張した面持ちが並ぶ。比べて見るせいか、戦後を生きる人々の顔は子供も大人も明るい。あけっ広げな街の空気が、それとよく似合う。
いま東京は何度目かの再開発ブーム。オフィスに商業施設に小ぎれいなビルが増え、空は狭くなるばかりだ。「一億総活躍」の旗のもと、そこで働く人たちの顔は輝いているだろうか。智恵子は最後に心のバランスを崩した。明日から連休。しばし喧噪を離れ、ふるさとで、近くの公園で、自分だけの青空を探すのもいい。
(日経新聞「春秋」2018/4/27)
見えないものは形あるものにする
これから、日本経済新聞のコラム「春秋」を、客観的、論理的に、読み解きながら、日本語の書き方、言葉の扱い方を確認していきましょう。
「智恵子は東京に空が無いといふ、/ほんとの空が見たいといふ」。
まずは、一文の最重要の意味をつくる主語と述語をおさえてみますが、どうでしょう、もし今、あれ? ちょっと難しいかも、と感じている人がいるとすれば、それは、見えていないものがあるからです。
見えないものは、言葉であり、「書き方」です。
見えなければ、意味・内容は捉えにくくなります。自分で、見えるようにしましょう。
見えないものは、形あるものにするんです。
では、何が見えないのかを確認してみましょう。
文の意味は、主語と述語から成ります。(基本確認は、カテゴリー「日本語 文法を基礎から読解、記述へ」をどうぞ。→ サイトマップ )
①述語の確認
②述語に対する主語の確認
③意味のまとまりの確認(『 』)
「智恵子は『東京に空が無い』といふ、/(智恵子は)『ほんとの空が見たい』といふ」。
※コラムで付されている「/」は、原文の詩では、二行書きで記されていることを示しています。
(スマホの場合は、横向きでご覧ください。)
「書き方」「読み方」は、言葉の並び方です。
「言葉の並び」に注意しましょう。
付されている読点「、」は、並列の読点です。同じ書き方、「形」が並んで記されているのがわかりますね。
「「智恵子は『東京に空が無い』といふ、
(智恵子は)『ほんとの空が見たい』といふ」。
||
「智恵子は
『東京に空が無い』と
『ほんとの空が見たい』と
いふ
では、ここで問題です。
問1 「智恵子は東京に空が無いといふ、/ほんとの空が見たいといふ」。この一文の主語と述語はそれぞれ何でしょう。
解答・解説は、次回で。