セント・オブ・ウーマンの意味 タンゴと女 闇を生きる男
このカテゴリーは、一切、ネタバレ無し!
あらすじも記しません。
映画は、予備知識なんてないほうが楽しめます。
アル・パチーノ アカデミー賞 主演男優賞
「セント・オブ・ウーマン 夢の香り」で、アル・パチーノは、とうとうアカデミー賞 主演男優賞を受賞しました。
アル・パチーノは、言わずと知れた「ゴッドファーザー」のマイケル・コルレオーネです。
マイケル役で、初めて助演男優賞にノミネートされます。
それから、「セルピコ」のフランク・セルピコ、ふたたび、「ゴッドファーザー partⅡ」のマイケル。
そうして「狼たちの午後」のソニー。
それぞれで主演男優賞にノミネートされます。
四年も続けてアカデミー賞にノミネートされるんですが、受賞は逃すんです。
それからさらに間をおいて、「ジャスティス」で主演男優賞ノミネート。
「ディック・トレーシー」、「摩天楼を夢みて」で、助演男優賞ノミネート。
ノミネートは何度もされるんです。
でも、やっぱり受賞はできないんです。
ちなみに、「ゴッドファーザー partⅢ」では、ノミネートもされませんでした。
そもそも、男優賞にしても、女優賞にしても、映画作品、脚本の出来次第といえますから、「ゴッドファーザーpartⅢ」でノミネートすらされなかったのは、いたしかたないところがあります。
「セント・オブ・ウーマン 夢の香り」で、アル・パチーノがアカデミー賞 主演男優賞を受賞するのは、「ゴッドファーザー」で初めて助演男優賞にノミネートされてから、実に18年の歳月が経っていました。
もちろん、アカデミー賞の受賞だけが、俳優の評価とはなりません。
でも、映画監督、俳優にとって、アカデミー賞は、やっぱり受賞したい、特別なものではあるんですよね。
名作「ゴッドファーザー」
くりかえしますが、俳優が生き、評価されるのも、作品とのめぐりあいによるところが大きいんです。その作品の中で、その役を演じるわけですから。
「ゴッドファーザー」が紛れもない名作であるのは、群像劇としての大成功作品だからです。
群像劇は、主演、助演の俳優だけが生きるお話ではないんですね。
しかしながら、アル・パチーノは、「ゴッドファーザー」で、マイケル・コルレオーネを見事に演じましたから、多くの人が彼に魅了されたわけです。
ブルース・ウィリスが俳優を志したのも、「ゴッドファーザー」でのアル・パチーノの影響から、というのも有名な話です。
それは、それだけ「ゴッドファーザー」のマイケルが魅力的だった、ということでもあります。
さらにいえば、それだけ、「ゴッドファーザー」という作品が魅力的だった、ということでもあります。
アルパチーノの演技へのこだわり
アル・パチーノの演技力は、「セント・オブ・ウーマン 夢の香り」で大いに生かされています。
アル・パチーノは、舞台で演技を磨いた俳優です。
舞台俳優は、演技力、特に、台詞まわしが命です。
基礎ともいうべき、それがうまくなければ、舞台俳優はやれません。
見た目だけでやっていけるほど、舞台は甘くないんですね。
アル・パチーノは、大変、台詞まわしのうまい俳優なんです。
「セント・オブ・ウーマン 夢の香り」では、それも大きく評価されて、アカデミー賞 主演男優賞となった、と僕は思っています。
また、アル・パチーノは舞台を愛し、演技にこだわりを持っています。
それは、自身が出演する作品選びにも表れています。
「スター・ウォーズ」のハン・ソロ役の依頼を断ったのも、「クレイマー・クレイマー」のテッド・クレイマー役の依頼を断ったのも、有名な話です。
(ハン・ソロは、ハリソン・フォードが演じ、テッド・クレイマーは、ダスティン・ホフマンが演じました。)
闇の中を生きる男の映画 タンゴ
「セント・オブ・ウーマン 夢の香り」を、僕が見たのは、二度しかありません。(ビデオを借りた覚えがないので、二度です、たぶん。)
最初は、封切られた年に、映画館で見ました。
そうして、ずいぶん長い年月を経てブルーレイが発売となって、それを購入し、でも、ずっと見ていなくて、ようやく見たのが、つい最近のことです。
最初見たときは、ラストのフランク(アル・パチーノ)の台詞まわし、その話に感動したのを覚えています。
二度目も、もちろん、そこで感動しました。
しかし、二度目の今回は、ラストのそのシーン以上に、感動し、図らずも感涙したシーンがあります。
タンゴのシーンです。
それほど長い時間のダンスではありません。
しかし、大感動しました。
「ゴッドファーザー」で、マイケルは幾度も女性と踊ります。それと重なったからというのも、ほんのいくらかはあったでしょう。しかし、一番の理由はそれではありません。
真っ暗な闇の中で、女性の香りを感じながら踊るフランクを、痛いほど身に感じたからです。
この映画は、闇の中を生きる男の映画です。
「ドナ」 女優 ガブリエル・アンウォー
フランクと一緒にタンゴを踊った「ドナ」は、ガブリエル・アンウォーが演じました。
本当に、魅力的なタンゴとなりました。
ガブリエル・アンウォーは、LUXのテレビコマーシャルにも起用されたのでした。
とても、とても、綺麗でした。
「セント・オブ・ウーマン」
「セント・オブ・ウーマン」、映画の中で、このタイトルの意味が理解できます。
真っ暗な闇の中での、「セント・オブ・ウーマン」は、フランクが男として、人として生きる最上のものであり、すべてなんです。
それは、まさに現実です。
人生なんです。
邦題の「夢」は、ずれています。
フランクの「セント・オブ・ウーマン」は、ただの甘ったるいような「香り」ではありません。「夢」描くような「香り」ではないんです。
愛する人がいなければ、そうして、愛してくれる人がいなければ、人は真っ暗な現実の闇の中を孤独に生きるしかなくなります。
闇とは、現実の孤独です。
この映画は、「セント・オブ・ウーマン」なんです。
念のために書いておきますが、見終わって、暗くなる映画ではありませんから、ご安心を。
名作です。