擬人法を例文で、意味と読み取り方を解説 比喩(直喩、隠喩)との区別
擬人法の例文
① 人がするように書いた擬人法(動作)
〇 誰かが座ると、そのイスは笑う。
〇 私は、猫のタマに、注意された。
〇 カバンは、まるで怒っているようだ。
② 人の性質、状態のように書いた擬人法
〇 ずいぶん神経質な空気清浄機だ。
〇 このクッションは、誰にでもやさしい。
〇 無口な岩だった。
③ 人の外見のように書いた擬人法
〇 餅(もち)は、ふくれっ面(つら)だった。
〇 その鳥は、さながら貴族みたいだった。
〇 その鳥の出で立ち(いでたち)は、貴婦人だった。
擬人法とは その効果とは
擬人法とは、人でないものを、人がするように記す、人のように記す、レトリック(修辞法・書き方)です。
無生物や動物を、人間にするわけです。
これにより、読み手は、無生物や動物に、親近感を抱いたり、反発したりします。
擬人法は、読み手の想像力をふくらませるんです。
「擬人法」という熟語の構成から意味を確認する
「擬人法」を、熟語の構成、漢字の意からも、確認しておきましょう。
「擬」とは、なぞらえること、似せること、真似ることです。
つまり、「擬人」とは、(「人」でないものを)「人」になぞらえる、「人」に似せる、という意。
「法」は、ここでは書き「方」の意です。
人でないものを、人になぞらえる書き方、人に似せる書き方、それが「擬人法」です。
擬人法 = 活喩法(かつゆほう)
「擬人法」は、「活喩法(かつゆほう)」ともいいます。
これも、熟語の構成、文字の意から、確認しておきましょう。
「活」とは、「活きる」=「生きる」意です。
(※「活魚(かつぎょ)」とは、「生きている魚」の意。)
「喩」とは、「喩(たと)える」意です。
つまり、(無生物を、)「生き物」・「生物」・「人間」に、「喩(たと)える」書き方、それが「活喩法」です。
「活喩法」とは、「擬人法」のことです。
擬人法の文と読解の際の注意点
通常の文で、「人」は、主語となり、動作、性質・状態等の主(ぬし)となります。
擬人法は、人でないものを、人にするわけですから、擬人法の文は、①動作の主体、②性質・状態の主体、③外見、などの意味を読み解くことが、重要となるんです。
① 人が「する」ように書いた擬人法(動作)
例
誰かが座ると、そのイスは笑う。
→ 本来、「笑」うという動作をするのは、人間です。
→ 例文において、「笑」っているのは「イス」です。
→ 「イス」は、人間ではありません。
→ 「誰かが座ると、そのイスは笑う」は、擬人法(活喩法)の文ということになります。
上記のような擬人法では、述語動詞と、その動作主(主語)に注意しましょう。
上記の擬人法の「述語動詞」は、「笑う」です。
その動作主(主語)は、「イス(は)」です。
動作と動作主 擬人法の読解ポイント
「誰かが座ると、そのイスは笑う」
上記の擬人法の読解ポイントは、「そのイスは笑う」とは、どういうことか、ということです。
→ 「笑う」という言葉の持つ意味から、「イスは笑う」の意味を考えます。
「笑う」の持つ意味 = おかしがって、声をあげる
「イス」の動作がポイントです。
「イス」が「笑う」とは、どういうことか。
→ 「イス」が笑う
→ 「イス」が笑い声をあげる
→ 「イス」が笑い声のような音をだす
「誰かが座ると、そのイスは笑う」
→ 誰かが座ると、そのイスは、人の笑い声のような音をだすということ。
② 人の性質、状態のように書いた擬人法
例
ずいぶん神経質な空気清浄機だ。
→ 「神経質」とは、人間(生物)に対して使う言葉です。
→ 例文において、「神経質な」のは、「空気清浄機」です。
→ 「ずいぶん神経質な空気清浄機だ」は、擬人法(活喩法)の文ということになります。
上記のような擬人法では、主体と性質に注意しましょう。
「主体」とは、性質、状態、動作等の主(ぬし)です。
例文の主体は、「空気清浄機」です。
その性質は、「神経質」です。
性質・状態とその主体 擬人法の読解ポイント
「ずいぶん神経質な空気清浄機だ」
上記の擬人法の読解ポイントは、「ずいぶん神経質な空気清浄機」とは、どういう「空気清浄機」かということです。
→ 「神経質」という言葉の持つ意味から、「空気清浄機」の性質、状態を考えます。
「神経質」= 神経が過敏である
= こまかなことを気に病む性質
「空気清浄機」の性質がポイントです。
「ずいぶん神経質な空気清浄機」とは、どういう「空気清浄機」か。
→ どのようなことが、「神経質な空気清浄機」なのか。
→ 「神経質」とは、どのようなことをいうのか、それを文字にする必要があります。
「神経質な空気清浄機」の意味を、具体的に、わかりやすく、記しましょう。
例① 汗臭(くさ)い男がスイッチをオンにすると、動かなくなってしまう「空気清浄機」。
(男の汗のにおいを吸い込みたくないんですね。「ずいぶん神経質な空気清浄機」です。)
例② 汗臭い男が少しでも動くと、途端に轟音(ごうおん)をたてる「空気清浄機」。
(臭いにおいが我慢ならないんですね。「ずいぶん神経質な空気清浄機」です。)
上の例からもわかるように、擬人法(活喩法)とは、無生物を、いかにも人間らしくする書き方なんです。
③ 人の外見のように書いた擬人法
例
〇 餅(もち)は、ふくれっ面(つら)だった。
〇 その鳥は、さながら貴族みたいだった。
〇 その鳥の出で立ち(いでたち)は、貴婦人だった。
※ 出で立ちとは、立ち姿の意です。
上記のような擬人法は、外見からの手法をとっています。
見た目からの書き方ですね。
外見からの擬人法 読解ポイント
外見からの擬人法は注意が必要です。
見た目は、往往にして中身(内面)を表すからです。
〇 餅(もち)は、ふくれっ面(つら)だった。
「ふくれっ面」の「餅」は、怒っている内面を表している場合もあります。
〇 その鳥は、さながら貴族みたいだった。
「さながら貴族みたい」な「鳥」も、外見のゴージャスさだけでなく、内面のゴージャスさを表している場合もあります。
〇 その鳥の出で立ち(いでたち)は、貴婦人だった。
「貴婦人」のような「出で立ち」の「鳥」は、内面が凛(りん)としているからこそ、「貴婦人」のようなのかもしれません。
※「凛と」とは、威厳のある様(さま)です。
外見からの擬人法が使われている際は、その主語、主体の、内面についても考えるようにしましょう。
「まるで」や「ようだ」等を使って書いた「擬人法」 直喩と区別する!
擬人法(活喩法)なのか、直喩なのか、迷う人が多いのが、次のような文です。
例
〇 カバンは、まるで怒っているようだ。
〇 その猿は、ちょうど科学者のようだった。
〇 その鳥は、さながら貴族みたいだった。
「まるで」、「ようだ」、「さながら」、「みたいだ」等の言葉を使っているから、上の例文を「直喩」と思ってしまう人がけっこういます。たしかに、AとBを比べて喩(たと)えているので、比喩、直喩の書き方ではあるのですが、基本的に、上のような例文を「直喩」とは、しません。すべて、「擬人法(活喩法)」とします。
「カバンは、まるで怒っているようだ」は、擬人法(活喩法)です。「その猿は、さながら科学者のようだった」も、擬人法(活喩法)です。「その鳥は、さながら貴族みたいだった」も、擬人法(活喩法)です。
「まるで」、「ようだ」、「ちょうど」、「さながら」、「みたいだ」といった言葉を使っていても、擬人化した書き方(人でないものを、人がするように、人のように、書いた書き方)をしていれば、「擬人法」です。
擬人法と隠喩の区別にも注意!
擬人法(活喩法)と、隠喩との区別にも注意しましょう。
擬人法(活喩法)の例
〇 その鳥は、貴族だった。
〇 その猿は、科学者だった。
上記の例文もまた、擬人法(活喩法)です。これを、「隠喩」とはいいません。注意しましょう。
擬人化した書き方をしているものは、「擬人法」なのです。
隠喩の例
〇 あの女は、天使だった。
〇 私の心の中は、今日も土砂降りだ。
〇 Y君は、一匹狼だぜ。
象徴の意味と例 隠喩との違い 高村光太郎「ぼろぼろな駝鳥(だちょう)」を読み解く
いずれのレトリックを、読むにしても、書くにしても、大切なのは、そこで、どういうことを強調しているのか、強調するのか、ということです。