品詞分解 助動詞の接続 古文が読めるようになる その3
「世の例にもなりぬべき御もてなしなり。」
「世の例にもなりぬべき御もてなしなり。」
→ 後の世の人々の語り草にもきっとなるに違いないようなご寵愛(ちょうあい)である。
これより、その3になります。
その1は、こちら → 品詞分解 助動詞の接続 古文が訳せるようになる その1
その2は、こちら → 品詞分解 助動詞の接続 古文が訳せるようになる その2
「世の例にもなりぬべき御もてなし」品詞分解 「べき」「御もてなし」
「世の例にもなりぬべき御もてなし」
「ぬ」に、「べき」が接続しています。
→「ぬ」は終止形でしたね。
→「べき」は、「推量の助動詞・べし」ということです。
・活用語の終止形に接続する「べき」は、「推量の助動詞・べし」です。
活用語の終止形に接続する助動詞は、6つ
→ べし・らし・らむ・まじ・めり・なり
このまま覚えてしまいましょう。
「終止形接続は、6つ! べし・らし・らむ・まじ・めり・なり」
「世の例にもなりぬべき」「ぬべき」は強意の推量「ぬべし」
「世の例にもなりぬべき」
→「ぬべき」
→「ぬ」+「べき」
→「完了」+「推量」
→「強意の推量」の意となります。
→「きっと~だろう」「~に違いない」などと訳します。
※強意の推量の形
「ぬ」+「推量の助動詞」、「つ」+「推量の助動詞」は、強意の推量の意となります。
→「ぬべし」「つべし」「にむ」「てむ」「ぬらむ」「つらむ」「なまし」「てまし」「にけむ」「てけむ」
「べき」の活用形
推量の助動詞「べき」の活用形を確認します。
「べき」の下(後)の語(言葉)に注目しましょう。
「世の例にもなりぬべき御もてなし」
「べき」の下(後)には、「御もてなし」という語(言葉)があります。
→「御もてなし」は、名詞・体言です。
→「べき」は、「連体形」ということです。
・この「べき」は、「世の例にもなりぬべき」という一まとまりの意味を、「御もてなし」という名詞(体言)に掛けています。
→「世の例にもなりぬべき」が、「御もてなし」を修飾しているのです。
→修飾・被修飾の関係です。
→どのような「御もてなし」なのか、というと、「世の例にもなりぬべき」「御もてなし」ということです。
→「世の例にもなりぬべき」の「べき」は、「推量の助動詞『べし』の連体形」
→ 推量の助動詞「べし」を覚えましょう。
助動詞「べし」の意味
助動詞「べし」には、推量の他にも・意志・可能・当然・義務・命令・適当・勧誘の意味があります。
前後の意味のつながりから訳すのが基本です。
「御もてなし」
「御もてなし」
「御」+「もてなし」
「もてなし」に尊敬の意の接頭語「御」が付いています。
「もてなし」
→ 処遇・取り扱い / 振る舞い・態度 / 取り計らい・処理 / もてなし・ごちそう
「御もてなし」
→ ご寵愛(ちょうあい)・ご処遇
「世の例にもなりぬべき御もてなし」 現代語訳
現代語訳
「世の例にもなりぬべき・御もてなし」
御もてなし → 御取り扱い・ご処遇・ご寵愛
「世の例にもなりぬべき・御もてなし」
「ぬべき」ですから、強意の推量の意で訳します。
→ 後の世の人々の語り草にもきっとなりそうな・ご寵愛(ちょうあい)
/ 世間の話の種にもきっとなるに違いないような・ご処遇
「世の例にもなりぬべき御もてなしなり」品詞分解 「なり」
「世の例にもなりぬべき御もてなしなり。」
「御もてなし」は、名詞です、体言です。
→ 「なり」は「体言・連体形接続の助動詞」ということです。
→「断定の助動詞・なり」
体言・連体形に接続する助動詞は、3つ
→ なり・たり・ごとし
このまま覚えてしまいましょう。
「体言・連体形接続は、3つ! なり・たり・ごとし」
「なり」の活用形
断定の助動詞「なり」の活用形を確認します。
「世の例にもなりぬべき御もてなしなり。」というように、「なり」の下(後)には句点(。)があります。
→ (文の)意味を結んでいる、終えている、ということです。
→「世の例にもなりぬべき御もてなしなり」の「なり」は、「終止形」です。(係り結びもありませんね。)
→「なり」は、断定の助動詞・終止形
「なり」の識別
「なり」の識別は3種類
○「体言・連体形」+「なり」 → 断定の助動詞「なり」
例「都にも来ぬ人なり」
→「人」は体言
→「都にも来ぬ人なり」の「なり」は、断定の助動詞 → 都にも来ない人である
○「終止形」+「なり」 → 伝聞推定の助動詞「なり」
例「夏来ぬなり」
→「ぬ」は完了の助動詞「ぬ」の終止形
→「ぬ」=「な・に・ぬ・ぬる・ぬれ・ね」
→「夏来ぬなり」の「なり」は、伝聞推定の助動詞
→ 夏が来たようだ
○「(性質・状態の意味)なり」 → 形容動詞
例「静かなり」
→「状態の意味+なり」
→「静かなり」の「なり」は、形容動詞の一部
→ 静かだ
「世の例にもなりぬべき御もてなしなり」 現代語訳
現代語訳
「世の例にもなりぬべき御もてなしなり。」
「世の例にもなりぬべき御もてなしなり。」の「なり」は、断定の助動詞「なり」の「終止形」
→ 後の世の人々の語り草にもきっとなるに違いないようなご寵愛である。
「世の例にもなりぬべき御もてなしなり」品詞分解
「世の例にもなりぬべき御もてなしなり。」
世 → 名詞
の → 格助詞
例 → 名詞
に → 格助詞
も → 係助詞
なり → ラ行四段活用・動詞・連用形
ぬ → 完了・助動詞・終止形
べき → 推量・助動詞・連体形
御もてなし → 名詞
なり → 断定・助動詞・終止形
「世の例にもなりぬべき御もてなしなり。」
→ 後の世の人々の語り草にもきっとなるに違いないようなご寵愛(ちょうあい)である。
未然形接続 已然形接続の助動詞
未然形に接続する助動詞、已然形に接続する助動詞も覚えてしまいましょう。
「未然形接続の助動詞は、11個、る・らる・す・さす・しむ・ず・む・むず・じ・まし・まほし」
こちらもぜひ確認してください
「徒然草」を扱っています → 是以 以是 而 漢文・古文を読めるように
已然形接続の助動詞は、特殊なので、注意しましょう。
「完了・存続の意味の『り』」だけです。
ただし、完了・存続の「り」は、四段活用動詞の已然形とサ変動詞の未然形に接続します。
ひとつだけ、さみしい、り、と覚えてしまいましょう。
→ ひとつだけ、サ未・四已、「り」。
→ サ行未然・四段已然の「り」です。この形は、「り」、ひとつだけです。
助動詞の接続
助動詞の接続は、多面的な読解のためにも覚えてしまいましょう。
未然形接続の助動詞は、11個 → る・らる・す・さす・しむ・ず・む・むず・じ・まし・まほし
連用形接続は、7つ → き・きり・つ・ぬ・たり・けむ・たし
終止形接続は、6つ → べし・らし・らむ・まじ・めり・なり
体言・連体形接続は、3つ → なり・たり・ごとし
ひとつだけ、サ未・四已、「り」