品詞分解 助動詞の接続 古文が訳せるようになる その2
「世の例にもなりぬべき御もてなしなり。」
その1はこちら→ 品詞分解 助動詞の接続 古文が訳せるようになる その1
「世の例にもなりぬべき御もてなしなり。」
→ 後の世の人々の語り草にもきっとなるに違いないようなご寵愛(ちょうあい)である。
※ これより その2になります。
その1は、こちら → 品詞分解 助動詞の接続 古文が訳せるようになる その1
「世の例にも(なりぬ)」品詞分解 「も」
「世の例にも(なりぬ)」
・「も」は、「世の例に」を受け、「終止形」に係る
→「係助詞」(「世の例にもなりぬ」では「ぬ【終止形】」
・「係助詞」は、種々の語に付いて、基本的に意味を強めます。(係助詞の「や」「か」の、疑問、反語も、その意味を強めているんです。)
・強調の意の語は、それを省略しても基本の意味が変わりません。
→「世の例になり」=「世の例にもなり」
→「世の例になり」を強めた形が、「世の例にもなり」
「世の例にも」 現代語訳
現代語訳
「世の例にも」
→ 後の世の人々の語り草にも ・ 世間の話の種にも
「世の例にもなり」品詞分解 「なり」
「世の例にもなり」
「世の例にも」の意味を受ける語が
・「どうするのか・どうなるのか(という動きの意味)」なら →「動詞」
(「動詞」= 言い切り「ウ段」・ラ行変格活用は「り」)
・「どんななのか(という状態・性質・心情の意味)」なら →「形容詞」か、「形容動詞」
(「形容詞」=言い切り「~し」・「形容動詞」=言い切り「~なり」「~たり」)
「世の例にもなり(ぬ)」
→「世の例にも」を受けているのは
→「なり(ぬ)」という動作
→「なり」は「動詞」(「なりぬ」の「ぬ」は助動詞)
※「形容動詞」の「~なり」とは、「静かなり」「あはれなり」などです。「形容動詞」は、性質・状態の意味を表します。
動詞「なり」 活用の種類
動詞「なり」の活用の種類を確認します。
→「なり」の末尾は「り」だから
→「ラ行」
→「なら・なり・なる・なる・なれ・なれ」と活用
→「ラ・リ・ル・ル・レ・レ」と活用
→「ラ・リ・ル・レ」とラ行の四段で活用
→「なり」は、「ラ行四段活用動詞」
※古文の動詞の活用の種類は、「四段活用」「上二段活用」「下二段活用」「上一段活用」「下一段活用」「カ行変格活用」「サ行変格活用」「ナ行変格活用」「ラ行変格活用」の9種類です。
動詞「なり」の活用形
ラ行四段活用動詞「なり」の活用形を確認します。
「なり」は、「ラ行四段活用」です。
「なら・なり・なる・なる・なれ・なれ」と活用します。
未然形 → なら
連用形 → なり
終止形 → なる
連体形 → なる
已然形 → なれ
命令形 → なれ
「世の例にもなり」の「なり」は、「連用形」です。
「世の例にもなりぬ(べき)」品詞分解 「ぬ」
「世の例にもなりぬ」
「ぬ」は、「なり」という動詞の連用形に接続しています。
→「完了」の「助動詞」ということです。
活用語の連用形に接続する助動詞は、7つです。
→ き・けり・つ・ぬ・たり・けむ・たし
このまま、覚えてしまいましょう。
「連用形・き・けり・つ・ぬ・たり・けむ・たし」と指折り数えながら、本気で20回も声に出せば覚えられるはず。
「連用形接続は、7つ! き・きり・つ・ぬ・たり・けむ・たし」
※覚えるときは、必ず「数」をおさえましょう。
連用形接続の助動詞は7つです。
「ぬ」の活用形
「完了」の助動詞「ぬ」の活用形を確認します。
「世の例にもなりぬ」
係助詞「も」の係り受けがありますから、「世の例にもなりぬ」で意味は結ばれます。
・係助詞「も」の結びは、基本的に終止形です。
・意味が結ばれる、意味が完成する、意味が終わるとは、基本的に終止形で文が終わるということです。
→「世の例にもなりぬ」の「ぬ」は終止形。
※「係り結び」
→「ぞ」「なむ」「や」「か」は「連体形結び」
→「こそ」は「已然形結び」
・終止形ではなく、特殊な結び方をするから、わざわざ「係り結び」というわけです。
「結ぶ」とは、意味が終わる・終える、完成する、ということです。
「世の例にもなりぬべき」「べき」からの「ぬ」
「世の例にもなりぬべき」
「ぬ」に接続している「べき」から見ても、「ぬ」は終止形と確認できます。
→「べき」は、終止形の活用語に接続する助動詞だからです。
「世の例にもなりぬ」の「ぬ」は、「完了」の助動詞「ぬ」の終止形です。
→完了の助動詞「ぬ」を覚えましょう。
「ぬ」の識別
「ぬ」の識別は2種類
○「来ぬ人」の「ぬ」は、打消しの助動詞「ず」の連体形 → 来ない人
○「夏来ぬ」の「ぬ」は、完了の助動詞「ぬ」の「終止形」 → 夏が来た
「世の例にもなりぬ」 現代語訳
現代語訳
「世の例にもなりぬ」
→ 後の世の人々の語り草にもなった ・ 世間の話の種にもなった
「世の例にもなりぬ」で、意味は結ばれます。「ぬ」は終止形ですしね。
しかし、注意してください。
これは、一旦、結ばれるということです。
なぜなら、「世の例にもなりぬべき」と「ぬ」の後に、さらに語が続いているからです。
文章中の意味は、ミクロに一つにまとまりながら、さらに大きな一つのマクロのまとまりの中に組み込まれていきます。
続きは、こちら → 品詞分解 助動詞の接続 古文が読めるようになる その3