熟語の構成 見分け方 解き方 漢字の組み立ては、簡単に捉えられる
熟語は意味から組み立てられている
漢字は、意味を表す文字です。
表意文字といいます。
そして、それぞれの漢字には、字義というものがあります。
根本の意味ですね。
しっかりとした意味です。
熟語は、そんなしっかりとした意味を持った漢字から構成されています。
構成されているということは、形が見える、ということです。
見えれば、読み解き、見分けることができます。
ここでは、熟語の構成の見分け方、読み解き方を記します。
二字熟語の基本の構成は9種類
基本の二字熟語の構成は、9種類です。
二字熟語の基本の確認(9種類)は、こちらをどうぞ → 二字熟語の構成 三字熟語・四字熟語の構成 熟語の成り立ち
二字熟語の構成を、見分けられるようにしましょう。
一目瞭然(いちもくりょうぜん)の構成 2種類
的・性・然・化
・「的」、「性」、「然」、「化」が、後(下)にあれば、「状態や性質等を表す構成」です。
〇的
〇性
〇然
〇化
(※ 「変化」は、「前後(上下)が、同じような意味の構成」です。変 = 化)
不・無・非・未
・「不」、「無」、「未」、「非」が、前(上)にあれば、「打ち消しを表す構成」です。
不〇
無〇
未〇
非〇
「的」・「性」・「然」・「化」
「不」・「無」・「非」・「未」
これらは、簡単に、見分けられます。
読み解くまでもありませんね。
訓読み、音読みにとらわれない
・残る7つの熟語の構成は、漢字一字一字の意味を確認します。
・根本の意味、字義の確認です。
・漢字一字一字は、意味のわかる読み方をしましょう。
訓読みだけが、意味のわかる読み方とはかぎりません。
例
肉=ニク
「ニク」は、音読みです
「しし」という訓読みは、「にく」の意味で、特に、食用の獣肉のことをいいます。
音読み、訓読みにこだわらずに、意味を捉えていきましょう。
字義の確認です。
そして、漢字と漢字の関係が、残りの7つのうちのどれにあたるかを考えましょう。
組み立て、構成とは、関係性から成ります。
前から後(上から下)の構成 2種類
前から後(上から下)の構成は、2種類です。
・主語・述語 → 主語は名詞、述語は主に動詞です。
・修飾・被修飾 → 被修飾の語は、名詞・形容詞・動詞、等等。(連体修飾・連用修飾の関係になります。)
※スマホを横向きにしてご覧ください
例
国立
→ 国・立
→ 国 → 「コク」と読んでは、意味がわかりません → 「くに」と読みます
→ 「くに」は、名詞です。
→ 「くに」が、「くに」は、というように主語になります。
→ 立 → 「リツ」と読んでは、意味がわかりません → 「たつ」、「たてる」
→ 「たつ」、「たてる」は、動作です
→ 国が立てる
→ 「国立」は、「主語・述語」の構成
「主語」は、名詞+「が」、名詞+「は」です。
この組み立ての「述語」は、主に動詞です。
例
急流
→ 急・流
→ 一字一字、意味を捉(とら)えましょう。
熟語の組み立てを確認する場合、二字全体で意味を捉えては、いけません。
二字で捉えると、「急流」の意味は「流れが急であること」とする人もでてくるでしょう。
「流れが」だから、「主語と述語の構成」と間違える可能性があります。
前後(上下)、漢字の位置をずらしてはいけません。よく見ましょう。「流」は、後(下)に位置しています。
(「急流」の意味は、「流れが急であること」で間違いはないのですが、その意味からの組み立てでは「後から前(下から上)に返る」組み立てになりますね。しかし、後から前(下から上)に返る組み立ては、「ニ」か「ヲ」のいずれかで返る組み立てだけです。「ガ」で、前(上)に返る組み立てはないのです。)
→ 急な・流れ
→ 「急流」は、「修飾・被修飾」の構成
(「美人」=「美しい」「人」→「人」は名詞
「最高」=「最も」「高い」→「高い」は形容詞
「再会」=「再び」「会う」→「会う」は動詞)
修飾・被修飾で、被修飾の語となるのは、名詞、形容詞、動詞、等です。
これは、連体修飾の関係・連用修飾の関係ともいえます。
・連体修飾 → 体言(名詞)を修飾 → 青空 → 青い・空 →「空」という体言(名詞)を修飾
・連用修飾 → 用言(形容詞)を修飾 → 極寒 → 極めて寒い →「寒」いという用言(形容詞)を修飾
連用修飾 → 用言(動詞)を修飾 → 疾走 → はやく・走る →「走」るという用言(動詞)を修飾
修飾・被修飾 目的語・補語は修飾語
漢文からの流れで、日本語も「~を」「~で」を「目的語」「補語」という場合がありますが、この「目的語」「補語」は、日本語の文の成分(主語・述語・修飾語・接続語・独立語)の上からは「修飾語」です。
よって、修飾・被修飾(上から下の流れ)の構成で、「目的語」「補語」は「修飾語」として扱います。
例
菜食 →「菜の食」と見れば、「名詞」+「の」+「名詞」で連体修飾の関係となります → 修飾・被修飾の構成
→「菜」を「食べる」と見れば、連用修飾の関係となります → 修飾・被修飾の関係
上記の「菜食」は、連体修飾・連用修飾、いずれの見方も可能です。
いずれにしても、「菜食」は「修飾・被修飾」の構成と見ることができるわけです。
一字一字の字義からの構成を見誤らなければ、根本の「修飾・被修飾」という構成は壊れないんです。
※「目的語」「補語」の説明については、こちらもどうぞ
後から前(下から上)の構成 2種類
後から前(下から上)の構成は、2種類です。
後(下)の漢字は主に名詞で、前(上)の漢字は主に動詞です。
・後(下)の漢字に、「に」を付けて、前(上)に返る
・後(下)の漢字に、「を」を付けて、前(上)に返る
※スマホを横向きにしてご覧ください
例
着席
→ 前(上)の漢字は、名詞ではありません。主語にはなりません。(「が」、「は」を付けられない)
「着」る、「着」く
「着」=「チャク」とは、「つく」意です。
(付着【ふちゃく】=つく・つく/「つく」から、「着る」意ともなるんです。)
「着」くは、動詞です。
→ 後(下)の漢字は、「席」が、「席」は、というように主語の形をつくれます。
「席」は、名詞です。
→ 後(下)から、前(上)に返ります。
→ 「席」を「着く」のか。「席」に「着く」のか。
→ 「席」に「着」く
→ 「着席」は、後から前(下から上)に、「に」で返る構成
例
作文
→ 前(上)の漢字は、「作」る = 動詞
→ 後(下)の漢字は、「文」ガ、「文」ハ、というように主語になります = 名詞
→ 「文」に「作」るか、「文」を「作」るか
→ 「文」を「作」るです
→ 「作文」は、後から前(下から上)に、「を」で返る構成
前後(上下)が、同じような意味か、反対の意味か(あわせて2種類)
・同じような意味の構成、反対の意味の構成、これらの熟語は、一字一字の根本の意味を考えましょう。
「読み」だけに頼らずに、意味を考えるんです。
・同じような意味の構成、反対の意味の構成は、前後(上下)の意味の品詞が、多くの場合、同じになります。
(「品詞」については、カテゴリー「日本語 文法を基礎から読解、記述へ」どうぞ → 「サイトマップ」)
※スマホを横向きにしてご覧ください
例
悲哀
→ 悲・哀
→ 悲しい・哀しい → どちらも形容詞
→ 悲しみ・哀しみ → 名詞
→ 悲しいも、哀しいも、「かなしい」意です
→ 悲しみも、哀しみも、「あわれみ」の意です
→ 「悲哀」は、同じような意味の構成
(「裕福」、「富裕」、「幸福」、みな、同じような意味の構成です。「裕」、「福」、「富」、「幸」、それぞれが、同じような意味の漢字であるから、組み換えが可能なのです。
【もちろん、自分勝手に漢字を組み換えて、熟語はつくれません。】)
〈おまけ〉
裕=福=富=幸 (漢字一字は、名詞として捉えます)
永久 → 永 = 久 → 永い = 久しい → どちらも形容詞
道路 → 道 = 路 → どちらも名詞
温暖 → 温 = 暖 → 温かい = 暖かい → どちらも形容詞
例
得失
→ 得・失
→ 「得」る ↔ 「失」う = 動詞
→ 「得」る、「失」うは、反対の意味
→ 「得失」は、反対の意味の構成
〈おまけ〉
前後 → 前 ↔ 後 【漢字一字は、名詞として捉えます】
高低 → 高 ↔ 低 → 「高」い ↔ 「低」い → どちらも形容詞
長い熟語を略したもの 略語 (1種類)
長い熟語を略したものは、上記の8種類の組み立てとはならない。
つまり、意味の上からの二字熟語の構成ではない、ということです。
なにしろ、略語ですからね。
略し方に法則があるわけでもありません。
例
科学捜査研究所 → 科捜研
文部科学省 → 文科省
入学試験 → 入試
航空母艦 → 空母
原子力潜水艦 → 原潜
原子力発電所 → 原発
国民体育大会 → 国体
国民健康保険 → 国保
社会保険 → 社保
重要文化財 → 重文
一字一字の意味を、形からも捉える
熟語の組み立ては、前後(上下)の漢字の関係性です。
関係性は、意味から成ります。
意味は、形からも捉え、読み解くものです。
次の記事からも、理解を深めてください。
熟語の構成を、より深く理解できます。
二字熟語の構成 三字熟語・四字熟語の構成 熟語の成り立ちの基本
熟語の構成の考え方 「修飾・被修飾」と「下から上に返る」組み立て
漢字辞典と国語辞典
多くの熟語を読み解くには、漢字一字一字の字義を知る必要があります。
辞書の使用は必須です。
一字一字を、どうぞ大切に。
※国語辞典からの熟語の意味で構成を解こうとすると間違えることが多々ありますから、注意しましょう。
国語辞典の解説は、熟語の構成からの書き方をしていません。
国語辞典では、漢字一字の意味の確認をしましょう。
熟語の構成を考える際は、できるだけ漢字辞典を使用しましょう。
一字一字の字義を確認するためです。
また「六書(りくしょ)」についても理解しましょうね。漢字が読めずとも、意味がわかるようになりますよ。