熟語の構成の考え方 「修飾・被修飾」と「下から上に返る」組み立て
「修飾・被修飾」の構成と「下から上に返る」構成の見分け方
今回、多くの人が迷う「修飾・被修飾」の構成と「下から上に返る」構成の見分け方を中心に記します。
多面的に、熟語の構成(組み立て)を考えてみましょう。
熟語の構成は、意味の構成
熟語の構成とは、意味の構成です。
たとえば、「座席」と「着席」は、違う意味の熟語です。
意味が違うのは、構成が違うからです。
「座席」は、「座る席」という意味です。
「着席」は、「席に座る」という意味です。
「座席」は、「修飾・被修飾」の構成(組み立て)です。
「着席」は、「下から上に返る」構成(組み立て)です。
※スマホを横向きにしてご覧ください
「座席」も、「着席」も、「席」が最後に記されている熟語ですが、「座席」は「座」を省略して「席」としても意味が通じます。
→ 「A-52の『座席』はどこでしょう」
= 「A-52の『席』はどこでしょう」
これに対し、「着席」は、「着」を省略して「席」としては意味が通じなくなります。
→ 「あなたは、A-52に『着席』してください」
≠ 「あなたは、A-52に『席』してください」
なぜ、こういった違いが生じるのでしょう。
→「座席」は、「修飾・被修飾」の構成で、「席」という名詞がキーとなる熟語だからです。
「修飾・被修飾」の熟語の構成は、「被修飾」の語がキーとなります。
→「着席」は、「下から上に返る」構成で、「席に着く → 席にゆきつく」というように、「着(く)」という動詞がキーとなる熟語だからです。
「下から上に返る」熟語の構成は、「上」の動詞の語がキーとなります。
(「キー」とは、最重要の意味ということです。)
「座席」は「席」がキー、「着席」は「着」がキー、
※ スマホを横向きにしてご覧ください
座席 → 「座る席」という意味
→ 「座る・席」
→ 「修飾・被修飾」の組み立て
→ 「被修飾」の語がキー
→ 「席」がキー
着席 → 「席に着く」という意味
→ 「席」に「着く」
→ 「下から上に返る」組み立て
→ 上にある「動作」の語がキー
→ 「着」がキー
多面的に思考する
何事においても気をつけるべきは、一面的なものの見方をしない、ということです。
熟語の構成を捉える際も、そうです。
だから、ある熟語を見て、「動作がキーになっているから、下から上に返る構成だ! まるっとお見通しだ!」などと、すぐに決めつけてはいけません。
多面的に思考しましょう。
「起立」は、「上下(前後)が同じような意味の構成」
号令で「着席!」といえば、その前に「起立!」ですね。
「起立」とは、「たつ」ことです。
「起立」のキーは、動作です。
「起つ」、「立つ」です。
「起立」は、「下から上に返る」構成ではありません。
「起立」は、「上下(前後)が同じような意味」の構成です。
起立 → 「起」=「立」
→ 「起(た)つ」=「立(た)つ」
→ 上下(前後)が同じような意味の構成(組み立て)
熟語の構成の解き方 漢字の組み立ては、簡単に捉えられる 見分け方でも記しましたが、
「上下(前後)が同じような意味の構成(組み立て)」は、基本的に同じ品詞(の漢字)が並びます。
起立 → 「起(つ)」=「動詞」
「立(つ)」=「動詞」
着席 → 「着(く)」=「動詞」
「席」=「名詞」
「修飾・被修飾」は、多様である
注意すべきは、一面的な捉え方をして思考停止しない、ということです。
「修飾・被修飾」の構成も、「動詞・名詞」という構成だけではありません。
「形容詞・名詞」の構成もあれば、「形容動詞・名詞」の構成も、「動詞・動詞」の構成も、「名詞(を・で)・動詞」の構成もあります。
じつに多様です。
座席 → 「修飾・被修飾」の構成
→ 「座る・席」
→ 「動詞・名詞」
黒板 → 「修飾・被修飾」の構成
→ 「黒い・板」
→ 「形容詞・名詞」
伝聞 → 「修飾・被修飾」の構成
→ 「伝え・聞く」
→ 「動詞・動詞」
肉食 → 「修飾・被修飾」の構成
→ 「肉」の「食」と見れば
→ 「名詞」の「名詞」で連体修飾の関係
→ 「肉を・食う」と見れば
→ 「名詞」を「動詞」で連用修飾の関係
→ 連体修飾でも、連用修飾でも、「修飾・被修飾」の構成にかわりありません。
※「連用修飾語」「目的語」「補語」等の説明は、こちらをどうぞ。
熟語の構成の解き方 漢字の組み立ては、簡単に捉えられる 見分け方
熟語の構成が理解できると、意味が「見える」ようになります。
多くの熟語に触れていきましょう。