三大和歌集 万葉集、古今和歌集、新古今和歌集の比較 三代集・八代集の覚え方
三大和歌集、三代集・八代集の基本知識を記します。
「大」「代」の漢字の違いに、ご注意を!
正岡子規と与謝蕪村についても、ちらと記します。
三大和歌集とは
文学史において、万葉集、古今和歌集、新古今和歌集、これらをビッグ3の歌集として、「三大和歌集」といいます。
※ 古今和歌集、新古今和歌集は、勅命(天皇や上皇の命令)による歌集で、「勅撰和歌集」です。
万葉集は、「勅撰和歌集」ではありません。
三代集・八代集とは
「三代集」とは、
古今和歌集
後撰和歌集
拾遺和歌集、です。
「三大和歌集」は、「大」です。
「三代集」は、「代」です。
「代」は、天皇の御「代」です。
「三代集」、「八代集」は、「勅撰和歌集」です。
「八代集」とは、
古今和歌集(こきんわかしゅう)
後撰和歌集(ごせんわかしゅう)
拾遺和歌集(しゅういわかしゅう)
後拾遺和歌集(ごしゅういわかしゅう)
金葉和歌集(きんようわかしゅう)
詞花和歌集(しかわかしゅう)
千載和歌集(せんざいわかしゅう)」
新古今和歌集、です。
※「和歌」という語は、省略可能です。
たとえば、「古今和歌集」を「古今集」といっても通じます。略称となります。
八代集の順番 覚え方
八代集の順番と覚え方ですが、最初の「古今集」と、最後の「新古今集」は、言わずもがなで、わざわざ頭を使うまでもありませんね。
また、「新古今集」の前の、「金葉・詞花・千載」は、そのまま覚えられるでしょう。(「きんよう・しか・せん【ざい】」って。)
混同したり、順番が覚えにくかったりするのは、残る三つですね。
「後撰集」
「拾遺集」
「後拾遺集」
これは、漢字の意味、熟語の構成(組み立て)で覚えましょう。
「古今」の「後に撰んで」「遺(のこ)ったのを拾って」「また後で遺ったのを拾って」「金葉・詞花・千載」で、「新古今」。
熟語の構成(組み立て)についてはこちら → 熟語の構成の解き方 漢字の組み立ては、簡単に捉えられる 見分け方
熟語の基本はこちら → 二字熟語の構成 三字熟語・四字熟語の構成 熟語の成り立ちの基本
三大和歌集の比較
では、「三大和歌集」、ビッグ3、「大」ね、これを比較してみましょう。
※スマホを横向きにしてご覧ください
万葉集
成立
759年頃(奈良時代末)
歌風
素朴で直観的
真実の姿や感情を尊重する → これを「まこと」という
句法
五七調
→ 五音句・七音句を一まとまりにする
→ 二句・四句切れ、となる
→ 重厚な表現となる
修辞
枕詞(まくらことば)
→ 特定の語を修飾したり、語調を整えることば
→ 基本的に、4音や5音などの1句から成る
→「しらぬひ」、「ひさかたの」、「あしひきの」、「あかねさす」等
序詞(じょし【じょことば】)
→ ある語句を導き出すための前置きのことば
→ 2句ないし4句にわたって成る
(働きは、「枕詞」と同じだが、音数、句数が違う)
→ 「足引きの山鳥の尾のしだり尾の」等
ちなみに、この記事のアイキャッチ画像は、奈良県明日香村の古宮土壇です。
きれいですね。
こちらもどうぞ → 枕詞とは 一覧 例 実践「和歌の訳し方」
古今和歌集
成立
905年(平安時代初期)
歌風
理知的、技巧的
もののあはれ → 自然や人事に触れて発する感動、情感
→ しみじみと感じ入る
→ ハートにじーんとくる感じ
句法
七五調 → 第2句と第3句が緊密に続く
→ 第3句と第4句との間が多少なりとも切れる
→ 初句・三句切れ、となる
修辞
縁語(えんご)
→ あることばと照応することば
→ あることばと意味の上で縁のあることば
例 「白雪の降りてつもれる山里は住む人さへや思ひ消ゆらむ」
→ 「雪」に対して「消ゆ」が縁語
掛詞(かけことば)
→ 同音異義から、1語に二つ以上の意味を持たせたもの
例 「秋の野に人まつ虫の声すなりわれかとききていざとぶらはん」
→ 「待つ」と「松」を掛けている
こちらもどうぞ
新古今和歌集
成立
1205年(鎌倉時代初期)
歌風
感覚的、象徴的
幽玄(ゆうげん)
「幽玄」とは、優艶(ゆうえん)【しとやかで人の心を魅了し美しい】を基調とし、言外に深い情趣、余情があること
句法
七五調 → 第2句と第3句が緊密に続く
→ 第3句と第4句との間が多少なりとも切れる
→ 初句・三句切れ、となる
修辞
本歌取り(ほんかどり)
→ 意図的に、先人の作の用語・語句などを取り入れて歌をつくること
例
本歌=「苦しくも降りくる雨か三輪が崎佐野の渡に家もあらなくに」
本歌取りした歌=「駒とめて袖打ち払ふ蔭もなし佐野の渡の雪の夕暮」
体言止め(たいげんどめ)
→ 一句の末尾を体言(名詞・代名詞)で終わらせること
例 「さびしさはその色としもなかりけり槙(まき)立つ山の秋の夕暮れ」
「心なき身にもあはれは知られけりしぎ立つ沢の秋の夕暮れ」
「見渡せば花も紅葉もなかりけり浦の苫屋(とまや)の秋の夕暮れ」
代表的な歌人
代表的な歌人を紹介しておきます。
万葉集の代表的な歌人
第一期 額田王(ぬかたのおおきみ)
第二期 柿本人麻呂(かきもとのひとまろ)
高市黒人(たけちのくろひと)
第三期 山部赤人(やまべのあかひと)
山上憶良(やまのうえのおくら)
第四期 大伴家持(おおとものやかもち)
明治の時代、正岡子規は「歌よみに与ふる書」で、「古今集」や香川景樹(かがわかげき)の流れをくむ桂園派(けいえんは)の歌を非難します。
子規が訴えたのは、万葉調で、写生による句でした。
子規が与謝蕪村の俳句を称揚したのも、蕪村の句が絵画的で、万葉調の、写生句だったためです。
正岡子規 絶筆三句はこちら → 俳句 正岡子規 辞世の句 三句を読む 糸瓜(へちま)の水
古今和歌集の代表的な歌人
第一期 読み人知らずの時代
第二期 六歌仙の時代
在原業平(ありわらのなりひら)
僧正遍昭(そうじょうへんじょう)
小野小町(おののこまち)
文屋康秀(ふんやのやすひで)
大伴黒主(おおとものくろぬし)
喜撰法師(きせんほうし)
第三期 撰者の時代
紀貫之(きのつらゆき)
紀友則(きのとものり)
凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)
壬生忠岑(みぶのただみね)
新古今和歌集の代表的な歌人
藤原定家(ふじわらのていか【さだいえ】)
西行(さいぎょう)
式子内親王(しょくしないしんのう)
慈円(じえん)
俊成卿女(しゅんぜいきょうのむすめ)