掛詞とは わかりやすく 訳し方を解説
掛詞とは
掛詞
→ 同音異義を利用して、一つの語に、二つ以上の意味を持たせたもの。
→ 清音・濁音は問わない。
→ 単語の一部でも可。
掛詞の訳し方
掛詞の訳し方
① 掛詞をおさえる。
→ どの語が、掛詞なのか。
※主な掛詞は覚えてしまいましょう
こちらを、ぜひ確認してください → 掛詞 例 一覧 あいうえお順
② 同音異義であることを、訳にだす。
→ 掛詞は二度訳す・二つの異なる意味を、文字に表す。
③ 全体の意味を整える・部分と全体の意味の整理・口語訳
→ 二つの意味を並べて示す。
掛詞の訳し方 実践
掛詞の例を次に示します。
実際に口語訳してみましょう。
「その1」から「その3」と、やさしいものから、ステップアップしていきます。
実践 その1
例
人まつ虫の声すなり
「古今集(よみ人知らず)」からのものですが、掛詞の部分のみを抜粋しています。
「秋の野に人まつ虫の声すなり我かとゆきていざとぶらはむ」
① 掛詞の確認
人まつ虫の声すなり
掛詞
→ まつ
→ 「待つ」・「松」
→ 動詞の「待つ」と、名詞の「松虫」の「松」とを掛けています。
② 同音異義を訳に表す・掛詞は二度訳す
人まつ
→ 人を待つ
まつ虫の声すなり
→ 松虫の声のするのが聞こえる
※「なり」→ 活用語の終止形接続。(中古以後は、ラ変型の活用語には連体形接続)
→ 音・声・気配などから、「~の音(声)がする」「~が聞こえる」の意となります。
③ 全体の意味の整理・二つの意味を並べて示す
人まつ虫の声すなり
訳
人を待つという松虫の声(のするの)が聞こえる
秋の野に人まつ虫の声すなり我かとゆきていざとぶらはむ
訳
秋の野に、人を待つという松虫の声(のするの)が聞こえる、私【を待っているの】か、と行って、さあ尋ねてみよう。
実践 その2
例
山里は冬ぞさびしさまさりける人目も草もかれぬと思へば
「古今集」源宗于(むねゆき)の歌です。
① 掛詞の確認
山里は冬ぞさびしさまさりける人目も草もかれぬと思へば
掛詞
→ かれ
→「離(か)れ」・「枯れ」
→「離れ」(=疎遠になる)と、「枯れ」を掛けています。
山里は冬ぞさびしさまさりける
訳 → 山里は冬になると寂しさがいっそうますものよ。
② 同音異義を訳に表す・掛詞は二度訳す
人目もかれぬ
訳 → 人目も離れてしまう → 人も訪ねてこなくなる → 人の訪れもなくなる → 人が訪ねてくることもなくなる
草もかれぬ
訳 → 草も枯れてしまう
と思へば
訳 → と思うと・と思うから・と思うので
③ 全体の意味の整理・二つの意味を並べて示す
山里は冬ぞさびしさまさりける人目も草もかれぬと思へば
訳
山里は冬になると寂しさがいっそうますものよ、人が訪ねてくることもなくなり、草も枯れてしまうと思うと。
実践 その3
せっかくですから、やや難しいものも例にあげておきます。
二度訳すコツをつかんでください。
二つの意味を並べて示すんです。
例
花がつみかつ見るだにもあるものを安積の沼に水や絶えなむ
「狭衣物語」から。
① 掛詞の確認
掛詞
→ あさ
→ 「安積(あさか)」・「浅」
→ 地名の「安積」の「あさ」と、形容詞の「浅し」の「あさ」とを掛けています。
「浅し」は、(相手の)自分への思いが浅い意。
※「花がつみ」は、「かつ」を導く枕詞です。
こちらもどうぞ → 枕詞とは 一覧 例 実践「和歌の訳し方」
花がつみかつ見るだにもあるものを
訳 → 花がつみの花は枯れてしまうのでしょうか
② 同音異義を訳に表す・掛詞は二度訳す
安積の沼に水や絶えなむ
訳 → 安積の沼の水が絶えてしまう
安積の沼に水や絶えなむ
訳 → あなたの浅い情けも絶えてしまう
③ 全体の意味の整理・二つの意味を並べて示す
花がつみかつ見るだにもあるものを安積の沼に水や絶えなむ
訳
安積の沼に水がなくなり、花がつみの花はやがて枯れてしまうのでしょうか、(それと同様に)あなたの浅い(お)情けもやがて消えてしまうのでしょうか。
地名、山の名、川の名には、特に注意しましょう。これらは、掛詞であることが多いんです。