締め切りとさせていただきます お送りさせていただきます 誤用に注意
誤用の多い「させていただく」
「させていただく」 「させていただきます」 誤用の多い言葉です。
とりあえず、この「させていただく」を使っておけば丁寧そうでいいだろう、くらいに考えている人もいるようです。
現代において、「させていただく」という敬語表現は、「許可」、「依頼」と「恩恵」がキーワードです。
「何かしらのことをする」のに、相手に「許可」をもらっている。
あるいは、何かしらの「依頼」が相手からある。
それを「する」結果として、自分は「恩恵」を受ける、良いことがある。
そんな場合に使用するのが、「させていただく」という謙譲語です。
例①
「ある動作をする」ことは、自分にとってメリットがある → その動作をすることの「許可」を相手に求める → 相手からその「許可」を得る → 「××させていただきます」
A「受付は午後3時で締め切りたいと思います。よろしいでしょうか」
B「はい」
A「では、3時で締め切りとさせていただきます」
例②
相手から、「ある動作をする」ことの「依頼」がある → その動作をすることは、自分にとってもメリットがある → 「××させていただきます」
A「パンフレットを送ってください」
B「承知いたしました。パンフレットを、お送りさせていただきます」
相手に、尋ねることもせず、 お願いすることもせず、「させていただく」を使うのは、誤りです。
この誤用が、最も多いようです。
そもそも、尋ねることも、お願いすることもしなかったら、「許可」なんて意味、生まれてきませんよね。
「許可」のない「させていただく」が、どれほど変なことなのか、次に例を示してみましょう。
例
医師「生命維持装置のスイッチをオフにさせていただきます」
あるいは、医師は、さっさとベッドを空けたいのかもしれません。
しかし、こちらが「許可」も、「お願い」もしていないのに、生命維持装置のスイッチをオフにされてはたまりません。
患者の家族は、「聞いてないよ!」となるでしょう。
あるいは、「いい加減な敬語、使いやがって! 殺す気か!」と。
受付の「締め切りとさせていただきます」は誤用
注意しましょう!
「させていただく」の誤用は、自分の欲求があからさまに出る形になります。
印象を悪くします。
例「受付は午後3時で締め切りとさせていただきます」
上の例、けっこう、あちこちで見たり、聞いたりする言葉ですよね。
客や患者は、「午後3時で締め切り」にすることを認めた覚えはありません。
A社やB病院が「午後3時で締め切り」にしたいだけです。
上の例は誤用です。
言葉数を増やして、なんとなく丁寧な雰囲気をだしたい、あるいは、なんとなく相手に配慮している雰囲気をだしたい、という思いが透けて見えてしまう物言いになっています。
しかも、それが、誤った言い方であるわけですから、丁寧も配慮も吹き飛び、印象は悪くなります。
もっとも、受け手側の中にも、「させていただきます」の誤用に気づかない人が多くいるのも事実なんですよね。
上の例を正しい言い方にするなら、次のようになります。
「受付は午後3時で締め切ります」
「受付は午後3時で締め切りです」
「受付は午後3時で締め切りといたします」
締め切り時間を設定するのは、A社やB病院なのですから、その「意思」を明確に示すのが、正しいわけです。
「締め切ります」、「いたします」の「ます」は、丁寧語で、敬語です。
「締め切りです」の「です」は、丁寧語で、敬語です。
「いたします」の「いたす」は、「する」の謙譲語で、これもまた敬語です。
それぞれ、十分に、礼を表した言い方です。
敬語をつかわなければ、次のようになりますからね。
「受付は午後3時で締め切る」
「受付は午後3時で締め切るぜ」
「受付は午後3時で締め切り」
「受付は午後3時で締め切りとする」
「受付は午後3時で締め切りだ」
「受付は午後3時で締め切りよ」
「送ってください」とあれば、「お送りさせていただきます」でもOK
「させていただきます」が、最も適した使い方となるのは、相手側から、依頼、お願いがあった場合です。
「A商品に興味があるので、資料を送ってください」というメールが来たら、その応えには、「お送りさせていただきます」が使えます。
依頼を受けることで、こちらにもメリットがあるわけですからね。
もちろん、「お送りいたします」を使ってもOKです。
「いたします」は、「する」ですから、意思が明確な書き方になります。