読解時の視点、書く際の視点
前回の続きです。
前回 → 書き方がわかれば、読める
書き方という「形」は意味を持つ
次の文章は、日経新聞の「春秋」の冒頭です。
「智恵子は東京に空が無いといふ、/ほんとの空が見たいといふ」。詩人の高村光太郎は生前の妻の言葉を「あどけない話」という作品にそう残している。東京で体を壊しては故郷の福島で調子を戻す。そんな彼女にとり、本当の空は故郷の山の上に広がる青空だった。(日経新聞「春秋」2018/4/27より)
第一文には、「 」が付されています。
「 」は、強調効果があります。
なにしろ、会話にしろ、引用にしろ、読む際に、目立ちますよね。
「 」は、書き方の一つの形です。
書き方という「形」は意味を持ちます。
読解とは、見えない意味を読み取ること
第一文を読解しましょう。
読解とは、見えない意味を読み取ることです。
さらに言えば、見えてはいないけれども、その書き方の上から確かに存在している意味を読み取ることです。
第一文
「智恵子は『東京に空が無い』といふ、/(智恵子は)『ほんとの空が見たい』といふ」。
見えてはいないけれども、存在している意味を補いました。
(智恵子は)です。
さらに、『 』も補いました。意味を捉えやすくするためです。
ここで、補った『 』は、「智恵子」が口にした具体的な内容で、彼女の言葉ですね。
それは、「第一文」の中で記されています。
「第一文」の中に存在しています。
一文の真の主語と述語の確認は、述語からです。
特別な書き方がされていなければ、述語は文末に記されます。
この一文では「いふ」ですね。
「いふ」=「いう」、動詞です。
述語に対応させて、主語を確認します。
誰が「いふ」のか。
誰が「い」ったのか。
「智恵子」ですね。
しかしながら、注意してください。
ここの主語は、「智恵子は」です。
「智恵子が」ではありません。文節の単位で捉えるのが基本ですから、「智恵子」でもありません。
これから述べる内容の題目、つまり、テーマを主語の形で示すのが、「は」です。
前回の問1の答
問1 「智恵子は東京に空が無いといふ、/ほんとの空が見たいといふ」。この一文の主語と述語はそれぞれ何でしょう。
答
主語=智恵子は
述語=いふ
読解時の視点 書く際の視点
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読解時の視点 書く際の視点
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・重要だから、くりかえされる。 = 重要なものは、(言葉をかえて、)くりかえす。
・くりかえされるから、省略される。= 同一の言葉は省略する。
・省略される言葉は、重要である。 = 省略することで、強調する。
問題
では、書き出しの第一文の内容確認をしてみましょう。
「智恵子は東京に空が無いといふ、/ほんとの空が見たいといふ」。
問2 「智恵子は東京に空が無いといふ、/ほんとの空が見たいといふ」。この一文で、最も重要な意味は、次の二つのうちどちらでしょう。
① 智恵子のいう空
② ほんとの空
(解答・解説は、次回で。)