ミュンヘン 映画 世界は、脳よりもはるかに広い
このカテゴリーは、一切、ネタバレ無し!
あらすじも記しません。
映画は、予備知識なんてないほうが楽しめます。
おすすめの映画をご紹介します。
「ミュンヘン」
実話を基にした作品であり、スパイ、クライムサスペンスの作り方になっています。
国の威信をかけて殺す
ミュンヘン・オリンピック選手村での、パレスチナ過激派「ブラック・セプテンバー」による、イスラエル選手団襲撃、ここからお話は始まります。
1972年に起きたこの事件は、最悪の結末を迎えるわけですが、映画「ミュンヘン」は、それからの、イスラエルによる、パレスチナへの報復をメインとしています。
国の威信をかけて殺す。
実話に基づいた作品です。
殺し、殺されるという現実
殺すことは手段でしょうか?
それとも、目的?
いえ、殺すことに、手段も、目的もありません。
人が人を殺す、人が人に殺される。
ただその現実があるだけです。
世界は、脳よりもはるかに広い
ややもすると、人は、自身の脳内のものでしか考えようとしないところがあります。
目の前のものを受け入れない。
他者の言葉を受けとめない。
そして、わかったつもりになる。
しかしながら、世界は広く、脳が、その世界を超えることは不可能です。
1972年といえば、日本では、あさま山荘事件が起きました。
大量の銃器を持った連合赤軍が、軽井沢のあさま山荘に、一人の女性を人質にして、長期にわたり、立てこもった事件です。
テレビでは、ライブ映像が流されました。
山荘の白い壁、多くの警官、そして大きな鉄球。
立てこもりから、数日後、警察は、クレーン車に大きな鉄球を取り付け、山荘の壁と階段を破壊したんです。
犯人たちは、銃で、複数の警官、民間人を殺しました。
銃弾を目に受け、失明した警官も数名いました。
重軽傷者、多数。
1972年、日本の現実です。
連合赤軍の彼らは、自らの正義と信念のもとに、行動していたんです、当初は、おそらく純粋に。
それは、「ミュンヘン」の中の、イスラエルも、パレスチナも同じです。
共通の認識
言葉の暴力も含め、様様な力で、他者を服従させようというのは、エゴでしかありません。
しかし、原始的な、その手法はいまだに、世界のあらゆるところに存在しますね。
会社にだって、学校にだって、家庭にだって。
外交においても、交友においても、一方的な自己主張から、良好な関係が生まれるはずもありません。
それは、本来、双方で認識していなければならないことです。
双方で、です。
一方だけが認識していても、コミュニケーションは成り立ちません。
会食が大変重要な意味となるのも、そこでは、丸腰で、同じものを食し、同じ味について、語り合えるからです。
そこにあるのは、共通の認識です。
共通認識で最も力となるのが、敬意
共通の認識で最も力となるのが、敬意です。
他者からの敬意があって、自身の存在はある、という認識は、他者への敬意を生みます。
両者の新しい歩みも、生みだします。
恋愛だって、友情だって、仕事の取り引きだって、共同声明だって、みな、そうでしょう。
やられたらやり返す無間地獄
映画「ミュンヘン」は、パレスチナにやられたから、やりかえす、というイスラエルによる報復を軸としています。
しかし、パレスチナもまた、やられたら、やりかえします。
報復合戦は、無間地獄(むけんじごく)をつくりだします。
それにより、エリック・バナが演じるアヴナーは、苦悩し、疲弊していきます。
家庭を持つアヴナーです。
しかし、アヴナーが殺すパレスチナ人にも愛する人がいるわけです。
無間地獄とは、仏教の阿鼻(あび)のことで、これは、諸諸ある地獄の中で最も苦しい地獄のことをいいます。
生きながらに、それをつくりだすのが、報復合戦であり、戦争です。
思考を縛るもの
私たちが生きる世界には、私たちを縛るものが数多くあります。
長い年月をかけて今も残るものなども、そういったものの一つです。
それらは、一人一人の思考を縛ります。
目の前のものを、見えなくもさせます。
目というものは、自身の思考が働かなければ、機能しないものです。
スピルバーグ監督
日本人の思考停止は、平和ボケによるなどとも揶揄(やゆ)されるわけですが、日本人だって、この映画「ミュンヘン」から、感じるものは多多あるはずです。
監督は、スティーブン・スピルバーグ!
「ミュンヘン」は、アカデミー賞でも、数数の部門でノミネートはされたものの、無冠となりました。
国、政治、宗教等等が絡む作品ですから、受賞は難しかったのかもしれません。
しかし、この映画、間違いなく、名作です。
かなり、見ごたえがあります。
個性豊かなチーム
主演のエリック・バナは、「ハルク」、「トロイ」の印象がまだ強く残っていた時期でしたが、見事にアヴナーを演じ切っています。
そして、このアヴナー率いる報復チームがまた個性豊かで、すばらしいキャスティングです。
「007」になる前のダニエル・クレイグ、「裏切りのサーカス」のキアラン・ハインズ、「アメリ」のマチュー・カソヴィッツ、ヴィムヴェンダース監督作でも馴染みのハンス・ツィッシュラー!
「パイレーツ・オブ・カリビアン」や「英国王のスピーチ」の、というより、「鑑定士と顔のない依頼人」の、と紹介したい名優ジェフェリー・ラッシュ、彼は、アヴナーの上官役です。
個性が光る映画作品ともなっています。
物議を醸したラストシーン
実は、この映画、特に、ラストシーンで、物議を醸しました。
イスラエルとパレスチナ間の問題は、はるか昔からのもので、イギリス、アメリカ、エジプト、シリア等等、多くの国国や国連もそれぞれの思惑を持って、両国と関わっています。
そういった長い歴史の中の、大きな関わりの一つとして、スピルバーグは、ラストシーンに、「あれ」を入れた。僕はそう考えています。
どうぞ、「あれ」をご覧になってみてください。