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母君はじめより 品詞分解 現代語訳 源氏物語 桐壺 その4

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紫式部の「源氏物語 桐壺」、その4です。

原文、現代語訳、品詞分解、そして語句の意味・用法、と記します。

母君はじめより 源氏物語 桐壺 その4 原文

母君はじめよりおしなべての上宮仕(うへみやづかへ)し給ふべき際(きは)にはあらざりき。

おぼえいとやむごとなく、上衆(じゃうず)めかしけれど、わりなくまつはさせ給ふあまりに、さるべき御遊びの折々、何事にも故ある事のふしぶしには、先づ参う上らせ給ふ。

ある時には大殿籠(おおとのごも)り過して、やがて侍はせ給ひなど、あながちに御前(おんまへ)去らずもてなさせ給ひし程に、自ら軽き方にも見えしを、この御子生れ給ひて後は、いと心ことに思ほし掟(おき)てたれば、坊(ばう)にも、ようせずは、この御子の居給ふべきなめりと、一の御子の女御は思し疑へり。

人より先に参り給ひて、やむごとなき御思ひなべてならず、御子達などもおはしませば、この御方の御いさめをのみぞ、なほわづらはしう、心苦しう思ひ聞えさせ給ひける。

母君はじめより 源氏物語 桐壺 その4 現代語訳

 母君はじめよりおしなべての上宮仕(うへみやづかへ)し給ふべき際(きは)にはあらざりき。

 母更衣ははじめから、ふつうの女官のような御前勤めをなさるはずの低い御身分ではなかった。

おぼえいとやむごとなく、上衆(じゃうず)めかしけれど、わりなくまつはさせ給ふあまりに、さるべき御遊びの折々、何事にも故ある事のふしぶしには、先づ参う上らせ給ふ。

(更衣は)世間の信望も大変厚く、高貴な方らしく見えるが、(帝が)むやみにお側にひきつけておおきになるあまり、しかるべき管弦の御催しの折々や、(その他)何事につけても趣向のある時々には、最初に(この更衣を)伺候おさせなさる。

ある時には大殿籠(おおとのごも)り過して、やがて侍はせ給ひなど、あながちに御前(おんまへ)去らずもてなさせ給ひし程に、自ら軽き方にも見えしを、この御子生れ給ひて後は、いと心ことに思ほし掟(おき)てたれば、坊(ばう)にも、ようせずは、この御子の居給ふべきなめりと、一の御子の女御は思し疑へり。

(帝は)ある時には御寝になり過ごし、(翌朝も)そのまま引き留め伺候させなさりなど、無理にお側を離さずお取扱いになったので、自然と(更衣は)身分の低い者のようにも見えたのだが、この御子がお生まれになってからは、(帝は)たいそう格別におとりはからいなさったので、東宮にも、悪くすると、この若宮がお立ちになるかもしれぬと、第一の皇子の母(である弘徽殿)の女御はお疑いになった。

人より先に参り給ひて、やむごとなき御思ひなべてならず、御子達などもおはしませば、この御方の御いさめをのみぞ、なほわづらはしう、心苦しう思ひ聞えさせ給ひける。

(この女御は)誰よりも先に入内なさって、(帝の)ご寵愛は並々でなく、(他に)御子たちもおいでになるので、この御方の御苦情だけを、(帝は)やはりうるさく、心に苦しく思い申し上げていらっしゃった。

母君はじめより 源氏物語 桐壺 その4 品詞分解

母君はじめよりおしなべての上宮仕(うへみやづかへ)し給ふべき際(きは)にはあらざりき。

母君 → 名詞

はじめ → 名詞

より → 格助詞

おしなべて → 副詞

の → 格助詞 

上宮仕し → 動詞・サ行変格活用・連用形

給ふ → 補助動詞・ハ行四段活用・終止形

べき → 助動詞・当然・連体形

際 → 名詞 

に → 助動詞・断定・連用形

は → 係助詞

あら → 動詞・ラ行変格活用・未然形

ざり → 助動詞・打ち消し・連用形

き → 助動詞・過去・終止形

おぼえいとやむごとなく、上衆(じゃうず)めかしけれど、わりなくまつはさせ給ふあまりに、さるべき御遊びの折々、何事にも故ある事のふしぶしには、先づ参う上らせ給ふ。

おぼえ → 名詞

いと → 副詞

やむごとなく → 形容詞・連用形

上衆めかしけれ → 形容詞・已然形

ど → 接続助詞

わりなく → 形容詞・連用形 

まつはさ → 動詞・サ行四段活用・未然形

せ → 助動詞・尊敬・連用形

給ふ → 補助動詞・ハ行四段活用・連体形

あまり → 名詞

に → 格助詞

さる → 動詞・ラ行変格活用・連体形

べき → 助動詞・適当・連体形

御遊び → 名詞

の → 格助詞

折々 → 名詞

何事 → 名詞

に → 助動詞・断定・連用形

も → 係助詞

故ある → 動詞・ラ行変格活用・連体形

事 → 名詞

の → 格助詞

ふしぶし → 名詞

に → 格助詞

は → 係助詞

先づ → 副詞

参う上ら → 動詞・ラ行四段活用・未然形

せ → 助動詞・使役・連用形

給ふ → 補助動詞・ハ行四段活用・終止形

ある時には大殿籠(おおとのごも)り過して、やがて侍はせ給ひなど、あながちに御前(おんまへ)去らずもてなさせ給ひし程に、自ら軽き方にも見えしを、この御子生れ給ひて後は、いと心ことに思ほし掟(おき)てたれば、坊(ばう)にも、ようせずは、この御子の居給ふべきなめりと、一の御子の女御は思し疑へり。

ある → 連体詞

時 → 名詞

に → 格助詞

は → 係助詞

大殿籠り過し → 動詞・サ行四段活用・連用形

て → 接続助詞

やがて → 副詞

侍は → 動詞・ハ行四段活用・未然形

せ → 助動詞・使役・連用形

給ひ → 補助動詞・ハ行四段活用・連用形

など → 副助詞

あながちに → 形容動詞・連用形

御前 → 名詞

去ら → 動詞・ラ行四段活用・未然形

ず → 助動詞・打ち消し・連用形

もてなさ → 動詞・サ行四段活用・未然形

せ → 助動詞・尊敬・連用形

給ひ → 補助動詞・ハ行四段活用・連用形

し → 助動詞・過去・連体形

程 → 名詞

に → 格助詞

自ら → 副詞

軽き → 形容詞・連体形

方 → 名詞

に → 助動詞・断定・連用形

も → 係助詞

見え → 動詞・ヤ行下二段活用・連用形

し → 助動詞・過去・連体形

を → 接続助詞

こ → 代名詞

の → 格助詞

御子 → 名詞

生れ → 動詞・ラ行下二段活用・連用形

給ひ → 補助動詞・ハ行四段活用・連用形

て → 接続助詞

後 → 名詞

は → 係助詞

いと → 副詞

心ことに → 形容動詞・連用形

思ほし掟て → 動詞・下二段活用・連用形

たれ → 助動詞・完了・已然形

ば → 接続助詞

坊 → 名詞

に → 格助詞

も → 係助詞

ようせずは → 副詞

こ → 代名詞

の → 格助詞

御子 → 名詞

の → 格助詞

居 → 動詞・ワ行上一段活用・連用形

給ふ → 補助動詞・ハ行四段活用・終止形

べき → 助動詞・推量・連体形

な → 助動詞・断定・連体形

めり → 助動詞・推量・終止形

と → 格助詞

一の御子の女御 → 名詞

は → 係助詞

思し疑へ → 動詞・ハ行四段活用・已然形

り → 助動詞・完了・終止形

人より先に参り給ひて、やむごとなき御思ひなべてならず、御子達などもおはしませば、この御方の御いさめをのみぞ、なほわづらはしう、心苦しう思ひ聞えさせ給ひける。

人 → 名詞 

より → 格助詞

先 → 名詞

に → 格助詞

参り → 動詞・ラ行四段活用・連用形

給ひ → 補助動詞・ハ行四段活用・連用形

て → 接続助詞

やむごとなき → 形容詞・連体形

御思ひ → 名詞

なべてなら → 形容動詞・未然形

ず → 助動詞・打ち消し・連用形

御子達 → 名詞

など → 副助詞

も → 係助詞

おはしませ → 動詞・サ行四段活用・已然形

ば → 接続助詞

こ → 代名詞

の → 格助詞

御方 → 名詞

の → 格助詞

御いさめ → 名詞

を → 格助詞

のみ → 副助詞

ぞ → 係助詞

なほ → 副詞

わづらはしう → 形容詞・連用形

心苦しう → 形容詞・連用形

思ひ → 動詞・ハ行四段活用・連用形

聞え → 補助動詞・ヤ行下二段活用・未然形

させ → 助動詞・尊敬・連用形

給ひ → 補助動詞・ハ行四段活用・連用形

ける → 助動詞・過去・連体形

語句の意味と用法

おしなべて → 動詞「押し並(な)ぶ」+て → すべて一つにするの意 → 副詞 → ふつう・並みの意。

上宮仕 → 典侍(ないしのすけ)、内侍、命婦(みょうぶ)は、常に主上のお側にあって御用をつとめるが、それより一段上の階級の女御や更衣は時々に参内するべきものであった。

上衆(じょうず)めかし → 貴人らしく見える・貴人らしくある。 

「めく」・「めかし」→ らしくあるの意。

上衆 ←→ 下衆(げす)

わりなく → むやみに

御遊び → 管弦のお遊び・管弦の御催し

折々 = ふしぶし → 機会

大殿籠り過して → 寝過ごしての敬語。「寝る」の敬語が「大殿籠る」。

やがて → 時をうつさずにそのままの意。

あながちに → 無理に

程に → 時空間を示す意。

心ことに → 格別に・特別に

坊 → 春宮坊(とうぐうぼう)の略称。皇太子の内政をおこなう役所。転じて、皇太子の意ともなる。

ようせずは → 悪くすると

なめり → 「なる(助動詞・断定・連体形)」+「めり」 → 「なんめり」(撥音便)

「なんめり」の撥音が記されずに、「なめり」。多くは、はっきりと断定するのを避けた物言いとして使用する。

心苦しう → 心に苦しく思う・気にする・気に病む

続きはこちら → 御局は桐壺なり 品詞分解 現代語訳  源氏物語 桐壺 その5